「東南角部屋2階の女」

おはようございます。お久しぶりです。
昨日はようやく試験が終わり、今日から束の間の夏休み(すぐに実習が始まってしまうので2週間、実質1週間強)です。その短い夏休みを映画と本で埋め尽くしてしまおうという目標を立てたので、早速映画3本借りてきました。昨日見たのは2本で、そのうちの1本はハズレ、もう1本は西島秀俊加瀬亮出演「東南角部屋2階の女」です。これは高校2年生の頃、加瀬亮*1で観たうちの1つ。その頃は映画ってCGとかアクションとか派手であればあるほど良いという感性だったため、このゆったりまったりした映画は正直つまらなくて、ただの加瀬亮のプロモーションビデオだと思いながら眺めていた気がします。ですが、今見返してみるとなにもかもわたしの好みで、最高…ッ!と唇を噛みしめ机に頭を打ち付けてました。何かに疲れてくたびれてる会社の上司西島秀俊(野上さん)と、その部下加瀬亮(三崎くん)というキャスティングにわたしの心はスタンディングオベーションでした。男と女の生き方の違いというか性格の違いというかそれが面白くて、男2人女1人という構図がとても好きなのです(江國香織きらきらひかる」、ドラマ「ビューティフルサンデイ」しかり)。(女2人男1人ではダメなんです、女は2人そろうと違う生き物になってしまうので。)だから、三崎くんの「どういうことっすか」から始まり、野上さんが正論を返し、三崎くんがキレるという。そして三崎くんが煙草吸いに行って収まったかと思いきや、野上さんがいきなり掴みかかる流れ、男の人にしかない展開で大好きです。ゆったりゆったり、大きな事件も運命を変える劇的な出来事もなく物語は進んでいきますが、それが良いんです。実際、自分の運命や人生を変えるのは誰かの何気ない一言とか、偶然とか、些細なことじゃないですか。見終わったあとに残るのは、「わたしも何か頑張ってみよう」とかそういう決意ではなく、心に優しく沁みるオイルのようなものでした。きっとこれが何かふとしたときに、わたしの人生を変えてくれるんじゃないかなそうだといいな。毎日している習慣だって、いつもより5秒遅れてやるだけで人生って変わると思うんです。そういう些細なものだと思う。今これを書きながら見直していて、ぼんやり考えていました。出てくる3人が抱えているものは誰もが持っているようなもので特別なことなんてないんですけど、でも本人にとってはドラマなのです、人生はすべて。
この映画は台詞がぽんぽん飛んでくるわけではなく、沈黙とか間の使い方がとてもよかったです。普通に生活していたらそんなに言葉なんて出てこないし、何を言っていいのかわからないことの方が多いし、そういうことが上手に丁寧に演出されていました。見返して良かった。

あらすじ
野上孝(西島秀俊)の父親が死んだ。父親が残した多額の借金を返済しなければならない彼は、祖父の野上友次郎(高橋昌也)の土地を売ろうと思いつくが、なかなか祖父を説得することができない。やがて、その土地に建つアパートで、恋人(大谷英子)に去られたばかりで会社の後輩だった三崎哲(加瀬亮)と、見合い相手の豊島涼子(竹花梓)との三人での共同生活が始まる。

「昔からくじ運なかったもんなあ」

祖父の土地を売って父が残した借金返済して出ていこうと決めたから、お見合いで家持ってる女の人選んだのに家持ってなかったときの野上(西島)さんの台詞。「女運」ではなく「くじ運」。言葉のチョイスよ。
でもそのあとの三崎くんの台詞

まあどっちもどっちっすかね

で、お互い顔を見合わせる野上さんと三崎くん良かった。わたしもテレビの前で「確かに」って頷いてた。

「じゃあどうしてほしいわけ」

これですよ、「関係ないじゃん」「関係なくないよ!」に続くサイテー!な男のテンプレートのような台詞。丸投げです、なにもかも。このあと涼子さんはずんずん歩いて行っちゃいますけど、「待ってよ」って言ってるのに突っ立ったままです。待ってよ感ゼロ。最高です。

他には公園のブランコで別れ話する加瀬亮とかもいてほんとうに心がシアワセ。


続きましては、ぽつりぽつりとお話して良い味を出している、塩見三省さんの台詞。

ゴリラは本当に孤独なときしか歌わないから、誰も聴くことはできないんだなあ。

進化の歴史から考えてみれば、人も鯛も親戚みたいなもんだ。人間が勝手に分類してるだけだ。
魚にとってはそんなことどうでもいいわけだ。
俺が大切にしてることと野上さんが大切にしてることは多分違うだろう。だからみんなすれ違ったりもめたりするわけだ。だけど理解できなくても、知ろうとすること、お互いにわかろうとすること、大事だよね。

猿真似っていっても猿には真似ができないんだよ。それができるのは人間だけ。真似でもなんでもいいからさ、とりあえずやってみなよ。じたばたするのも面白いんじゃない、人間らしくてさ。

最後に。

「アフリカって何がおいしいの?」
「そんなことわからないから行くんすよ」
「マニュアル本読んでないんだ」
「そういうのいらないかなあって。すべての答えはアフリカにありますから。」
「それなりに進化してんじゃん」

3人が進む道を決めたり、決めようとしていたり、最後の場面での涼子さんと三崎くんのこの会話が大好きです。それを見ながら笑っている野上さんも。




「東南角部屋にも、西日って射すんだね。」

*1:加瀬亮が好きな女二人集まって昼から晩までひたすら出演作品を鑑賞する会(を開いてました)