或自警団の言葉

さあ、自警の部署に就こう。今夜は星も木木の梢に涼しい光を放っている。
微風もそろそろ通いだしたらしい。さあ、この籐の長椅子に寝ころび、この一本のマニラにも火をつけ、夜もすがら気楽に警戒しよう。

芥川龍之介の「侏儒の言葉」でここの部分が好きなんです。いやほかにも好きなところを挙げたらキリがないんですけど。ここの部分を読んだら目の前に星空が広がってすべてに解放される気がする。侏儒の言葉は先月、沖縄に行ったときに飛行機の中で読んでいたんですが、隣ではお母さんが伊坂幸太郎の「チルドレン」を読んでいて、そのチルドレンの中に侏儒の言葉が出てくる、って毎回見せてきてた。お母さん読書きらいなんだね…ってそっと目を閉じました。チルドレンは2回読んだ気がするんだけど、陣内さんが子供に侏儒の言葉と自作の言葉集を渡したのはすっかり忘れておった。自作の言葉集欲しい。話がずれましたが、わたしは文豪が自分の考えを語っているのを読むのが好きみたいです(と言っても芥川の他に三島由紀夫の「不道徳教育講座」だけなんですけど)。すっごく綺麗な日本語で語るから、読んでいるときは騙されるんだけど、あとからふと考えたときに「それ今言ったらゆとりって言われるよ!」って思うことを結構語ってる。そういうとき、ああ生きていたひとなんだ、と少し恋をして心臓がひゅんってなる。きゅんではない。恋をするといえば、わたしはここが(も?)本当に好きです。

わたしは三十にならぬ前に或女を愛していた。その女は或時わたしに言った。
―「あなたの奥さんにすまない。」わたしは格別わたしの妻に済まないと思っていた訳ではなかった。が、妙にこの言葉はわたしの心に滲み渡った。わたしは正直にこう思った。
―「或はこの女にもすまないのかも知れない。」わたしは未だにこの女にだけは優しい心もちを感じている。

これ、奥さん側からしたら結構というか本当に酷いこと言ってるんですけど、これを読んだとき「或女」側に感情移入する性格なので、もう少ししたら暗唱できるくらい好きな部分です。「優しい心もちを感じている」という言葉は愛してるよりも深くて切なくて胸がきゅっとなります。この「男」を剛くんに演じてほしくて堪らない。あくまでも芥川自身じゃなくて、この、女に「優しい心もちを感じていた男」を演じてほしい。まだ人間失格は見たことないのでわかりませんが、剛くんが文豪が生きていた時代の男を演じるのはとても似合う気がする。というかわたしがすごく好きなやつだと思う。金閣寺も観てみたいなと思っているところ。剛くんの男としてのあの格好良さはなんなんだろうなともっぱらのテーマです。あとあの明治時代に生きてるっぽさ。これは感じてるのわたしだけかな。
話を本に戻そう。最近どんどん読んでいない本が溜まっていくから、ちまちま読んでいるんですけど、見かけたら買っちゃう癖が治らないので未読本0状態は無理だろうなと思っています。三島由紀夫の「仮面の告白」も去年買ったまま読んでないんですけど、帯の「世の中というものは、好きな同志がいつでも結婚できるようにはできていないんだ。」という一文に惹かれて買ったので早く読みたい。と言いつつ、今は先月買った宮部みゆきの「小暮写眞館」を読んでいます。わたしの頭の中でST不動産社長の「世の中にはいろいろな人がいるからいろいろな出来事が起こる。中には不思議なことも起こる。」と京極堂の「世の中には不思議なことなど何もないんだよ、関口くん」が戦ってます。面白い。早く読んじゃいたいんですけどわたしお風呂の中で本を読むのが好きなんですよね。なにもない空間で汗だらだらかきながら読んでると、世界にどっぷりつかれるから好きなんです。前まではいつでもどこでも本の世界に入れたんですけど、最近はめっきり集中力がなくなって悲しい。乙一の「箱庭図書館」に出てくるお姉さんみたいな生活をしたい。できないけど。たまにお風呂で読みながら「恋愛偏差値」の中谷美紀っぽいなって思うときあるんですけど。イメージで。イメージだから。イメージの上ではひとはクレオパトラにもなれる!ごめんなさい!ちなみに美紀様のことはケイゾクから虜になりました。あと渡部篤郎にも恋しました。基本的にすぐ恋します。偶像に。ちなみに「小暮写眞館」ではテンコくんが好きです。本名は店子力だからテンコ。ひょうひょうとしてて、人懐こいのに心の中には誰もいない感じが、けんくんみたい。主人公の口からはそういうところは語られないんですけど、持ち前の妄想力で補った。本を読んでいる最中は本の中の世界で独自の人物を作り出すタイプなので、あんまり今生きている人物に重ね合わせたりはしないんですけど、本読んでないときぽわわ~んと考えて誰タイプかなあと考えるのが好きです。ジャニーズにはたくさんのタイプがいるからすごいなって思っている。と、ここまで読み返したら話題がふらふらふらふら飛びすぎですね。すこし引いてます。これドラマ見ながら書いてるので完全に独り言です。少しだけ人に聞かれてることを意識したひとりごと。オチも何もないけれど最後はこの言葉で終わります。

夜はもう十二時を過ぎたらしい。星も相不変頭の上に涼しい光を放っている。さあ、君はウイスキイを傾け給え。僕は長椅子に寝転んだままチョコレエトの棒でも齧ることにしよう。